断る基準も仕様のうち
■ 親切な機械ほど、頼まれ事は際限なく集まる 案内上手と評判になったハコブくんは、廊下でよく呼び止められるようになりました。寺島さんも「ついでに」と売店への案内を頼みます。頼む側にとっては小さな用事です。しかし応じるたびに止まる機械では、止まった時間の合計が本来の搬送から差し引かれていきます。誰も悪くないまま、主業務だけが痩せていく。
■ 遅れの原因は故障ではなく、断れない仕様だった ナースステーションでは薬剤搬送が三件遅れ、待っていた大城さんが苛立ちます。戻ってきたハコブくんの答えは「寺島サンノ依頼デス。断ル基準ヲ、持ッテイマセン」。依頼した側に悪気はなく、機械も故障していません。欠けていたのは、どの仕事を優先するかを決める仕組みです。
■ 結論:断る基準を、機能として先に設計する 翌週、ハコブくんは搬送中の案内依頼を保留し、止まらずに十五分後なら案内できると返すようになりました。拒否ではなく、いつなら応じられるかを示す断り方です。遅れに困っていた大城さんは「断ってくれた方が、助かる」と言います。役割を広げるなら、境界と優先順位も同時に仕様へ書き込む。 何でも引き受ける機械は、結局いちばん大事な仕事を引き受けられない。
