消せない記録の使い道
■ 記録が消えないことは、隠したい人には脅威になる
小芝先生は病室番号を言い間違え、薬剤は別の部屋へ届きかけた。ハコブくんが途中で気づいて引き返し、実害はなかった。それでも本人にとっては、残った記録が怖い。だから周りを見回し、小声で「なかったことにできない?」と頼む。ミスをした人の目に、消せない記録は自分を裁く証拠として映る。
■ 消せないと告げた機械は、そのまま報告の伴走者になる ハコブくんは「記録ハ消セマセン」と答え、そこは譲らない。だが続けて「報告ハ一緒ニデキマス」と申し出る。この申し出によって、同じ記録が責めの材料から、何が起きたかを説明する手がかりに変わった。記録の中身は何も変わっていない。変わったのは、記録を誰の側に置くかという設計である。
■ 結論:報告を罰しない組織だけが、記録を学びに変える 大城さんは怒らず、「次も言いに来てね」とだけ返した。報告しても責められないと分かれば、人は小さなミスも持ち込むようになる。ヒヤリハットは、集まって初めて組織の学びになる。ロボットが残す正確な記録は、非難しない報告文化と組み合わさったときにだけ、隠す理由を消せる。 記録を消す機能はいらない。要るのは、消したくなる理由を消す文化だ。
