自己診断に潜む死角
■ センサーの汚れは、そのセンサーでは見つからない
ハコブくんは人や物を見落とし始めた。だが自己診断は全機能正常と答える。嘘をついているわけではありません。レンズに付いた埃は、そのレンズを通した像を曇らせるだけで、埃そのものは像に写らない。観測装置は自分の状態を観測対象にできない。異常は出力にだけ現れ、診断結果には現れないのです。
■ 異常に気づいたのは、外から覗き込んだ人でした
寺島さんは屈み込み、ハコブくんの視点そのものを外側から見た。埃は一拭きで落ち、認識精度はすぐ戻った。作業としては数秒です。難しかったのは、機械の申告を疑い、機械が見ている場所を人が代わりに見るという発想の切り替えのほう。点検とは、性能ではなく前提を確かめる行為なのです。
■ 結論:自己診断は、外からの点検とセットで初めて機能する
ハコブくんは視界不良を検知できなかったと困惑し、自分の目は自分で見えないと言う。大城さんは定期的に拭くと応じた。責任の所在を機械から人へ移したのではなく、届かない領域を分担した。自己診断の信頼性は、診断できない範囲をあらかじめ人の手順に組み込めているかで決まります。
自分の目に付いた埃を見つけて拭えるのは、いつでも自分ではない誰かの指だ。
