MANGA EP68ハコブくん2026/8/17
保持期限という別れ方(MANGA EP68 表紙) 保持期限という別れ方(MANGA EP68 本編)

保持期限という別れ方

■「消していいよ」と言われた機械は答えを持たない 退院の日、岩田さんはハコブくんに「もう使わないなら、消していいよ」と告げます。伴走してきた歩幅のデータは、本人にとっては役目を終えたもの。けれど機械の側に、その場で削除を決める権限はありません。返せるのは、あらかじめ決められていた期限だけです。岩田さんは軽く笑って去っていきます。

■削除規約は、いつのまにか別れの作法になる 保持期限は本来、事務的な取り決めです。個人データをいつまで持ち、いつ消すか。運用上の安全のために引かれた線にすぎません。ところがその線は、利用者から見れば「どれくらい覚えていてくれるか」に読み替えられます。管理の指標が、そのまま関係の長さになるのです。引いたのは技術者、読むのは患者です。

■結論:期限の欄に、別れ方が書かれている ハコブくんは「30日ハ、覚エテオキマス」と答えました。忘れないとも、すぐ消すとも言わない。決められた期間だけ持ち続けるという事実を、そのまま差し出しています。設計者が数字を選んだ瞬間に、別れの長さは決まっていました。仕様書の一行が、最後の挨拶になる。 データをいつまで持つかを決めた時点で、どう別れるかも決まっている。