寄り道は、異常ではない
■ 案内という一本の線に、その質問は入らなかった 入院手続きを終えた中村拓也さんを、ハコブくんが病室まで案内します。経路は登録済み。途中で拓也さんが「ちょっと、トイレどこ?」と尋ねますが、返ってくるのは「経路ヲ継続シマス」の二度の繰り返しだけ。案内という一本のタスクに、その問いを差し込む場所が用意されていなかったのです。
■ 人間の移動は、そもそも一直線ではない 売店に寄り、洗面所に立ち寄り、知人に会って立ち話をする。目的地に着くまでの間に、小さな中断が何度も入ります。中断・寄り道・再開を想定しない案内は、最初の寄り道で崩れる。この設計が想定していたのは、人間の移動ではなく、地図上の直線でした。
■ 結論:中断できることが、完了できる条件になる 拓也さんは自分で探しに行き、ハコブくんはその場で待ち続けました。戻った本人の言葉は「置いてかれるかと思った」。設計した本人が見落としていたのは、誰もが毎日していることでした。以降、経路の一時中断と再開が設計に加わります。中断を扱えるようになって初めて、案内は最後まで到達できます。 寄り道を想定できない案内は、案内ではなく連行になる。人は直線では歩かない。
